立教大学経営学部 森永雄太先生のワークショップ演習に、ワーク・モチベーション研究所所長菊入みゆきが、ゲスト講師として登壇しました。 以下、ワークショップの模様をレポートします。

この演習には、立教大学経営学部の2年生27名が参加しています。 2013年5月28日、6月4日のそれぞれ1限目90分間の授業を担当しました。

◆モチベーション理論を学ぶ

5月28日のワークショップでは、「モティベーションを学ぶ12の理論」(鹿毛雅治編・金剛出版)を題材に、グループ別に手分けして読み、サマリーを互いに共有しました。

取り上げられたのは、「内発的動機づけ」「自己決定理論」「接近・回避動機づけ」「他者志向動機」「達成目標理論」「セルフ・エフィカシー」「学習性無力感」といった、伝統的な研究を主とした様々な理論です。

「お店の雰囲気がいいとか、飾り付けがきれいとかが、『状況の性質』で、これも『状態興味』のもとになって、『内発的動機づけ』が高まります」など、具体的な説明を交えて、それぞれの担当の理論が紹介されました。

◆やる気のジェネレーション・ギャップ

6月4日のテーマは、「やる気のジェネレーション・ギャップ」です。
20歳前後の若い世代が考える「モチベーションの世代間格差と」は、どのようなものでしょうか。
演習の参加者27名は、それぞれ事前にインタビュー調査やアンケート調査を行い、レポートを作成しています。調査の対象は、「自分より20歳以上年上の人」。
ご両親に話を聞いた人が多かったようです。

◆バブル世代と現代の学習性無力感

数名ずつ6班に分かれてグループディスカッションです。
バブル世代に若者だった人は、がんばった分だけリターンがあった。現代の若者は学習性無力感がある」
「親世代は、家族を養うため、という外発的モチベーションでやる気を高めている。若者は興味がある仕事に対して内発的なモチベーションで仕事をする」
など、前回学んだ理論を取り入れつつ、ジェネレーションギャップに関する考察が討議されます。

◆「守るもの」と「外発的モチベーション」

討議の結果をもとに、グループごとに、仮説を構築し、全グループが発表をしました。

  1. モチベーションはIT化により低下する。
  2. 守るものが増えれば、外発的モチベーションによりやる気が上がる。
  3. モチベーションは責任感によって変化し、責任感は年齢が上がるにつれ、大きくなる。

など、ユニークな仮説が提示されました。「守るもの」と外発的モチベーションの関係など、深く考えてみたいトピックスです。

  1. 観察者自身のモチベーションの高さによって、被観察者のモチベーションに対する理解が変わる。

という独自の視点を持つ仮説も登場。職場の管理職も、自分のモチベーションの高さによって、部下のモチベーションをどう捉えるかが変わりそうです。

◆モチベーション賞

育ってきた環境と教育によるギャップがあるとした上で、「仕事の成功」「場の雰囲気」によって、世代に関係なくやる気が上がる、とした発表に、菊入から「モチベーション賞」が贈られました。賞品は「職場で“モテる”社会学」です。

◆時代性と年代性

「やる気のジェネレーション・ギャップ」は、興味深いテーマです。そこには、「時代」と「年代」の二つの軸があります。経済環境や社会的規範の差異により、成功体験やセルフ・エフィカシーが影響を受ける。また、年を経ること、キャリアを積むことによる発達課題や価値観の変化、外的キャリア(職位など)の変化がモチベーションに影響する。

さらに、親世代へのインタビューにより、若い世代はモチベーションが低いというケースと高いという正反対のケースが確認され、観察する人によりモチベーションが違って見えることも報告されました。

◆最後に

立教大学のワークショップ演習の皆さんは、高い学習モチベーションを持って、ワークショップに取り組んでいました。事前調査やレポートはそれぞれに熱のこもった独自性の高い内容ですし、グループディスカッションや発表も、面白く、活気のあるものでした。

今後の学習成果、そして、卒業後の社会での活躍が期待されます。私自身も、楽しく、学びのあるワークショップでした。

ワーク・モチベーション研究所 所長 菊入みゆき
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